雨の日、鈴はいつものカフェに足を運んでいた。彼女の心には秘密の思い出があった。このカフェは、彼女が初めて好きになった人、大樹と出会った場所だった。しかし、その出会いは一度きり。彼女はその後、彼を見かけることはなかった。
「また来ちゃった」と鈴は苦笑しながら、雨を避けるように店内に入った。カウンター席に座り、ホットコーヒーを注文した。窓の外を流れる雨を眺めながら、彼のことを思い出していた。その時、入口のベルが鳴った。
不意に目を上げると、信じられない景色が広がっていた。大樹が、傘を振り払いながら店内に入ってきた。鈴の心臓は高鳴り、その場で動けなくなった。
「偶然だよね」と大樹は鈴の方を見て微笑んだ。「君、覚えてる?」
鈴は恥ずかしげにうなずいた。「あの日から、何度もこのカフェに来てたんだよ」
大樹は驚きの表情を浮かべた。「僕もだよ。でも、君に会える確率は低いと思ってた」
二人は、お互いの心の中で秘めていた想いを語り合った。その日の雨は、彼らにとって、幸せの始まりの予感となった。
恋には確率なんて関係ない。ただ、その確率の中で、一瞬の奇跡を信じて待つことができる人たちに、幸せは訪れる。
確率の糸に絡まる恋